人生には理由がある
vol.19
美容クリエイター・メイクアップアーティスト/ギュテさん
ギュテ/美容クリエイター・メイクアップアーティスト
壮絶な過去から
幸せに導いたメイクの力
美容クリエイター・メイクアップアーティスト/ギュテさん
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東方神起・ジュンスに憧れてメイクデビュー
そんな日々を送る中で、ギュテさんが夢中になったのが東方神起をはじめとする韓流アイドルたち。ある日、東方神起のメンバーであるジュンスのソロデビューのビジュアルを見たギュテさんは衝撃を受けます。「男性でもメイクでこんなに変わるんだ」。早速そのメイクの真似をしようと、母親の化粧品を使って目元に黒いアイシャドウを塗ったところ「それだけで、コンプレックスだった小さな目の印象がガラッと変わって、魅力的になった気がしました。メイクって楽しい!そう思った初めての経験でした」。
以来、1人でこっそりジュンスのモノマネメイクをしては自撮りをSNSにアップをする毎日。「似ていますね」「かっこいいです」そんな好意的なコメントをもらうたびにますますメイクが楽しくなり、自分に自信が持てるようになっていきました。それでも「バレたらいじめられるんじゃないか」「母親に知られたら叱られる」という思いから、メイクをしていることを誰にも話すことができませんでした。
死にたいと思うほど追い詰められた10代の頃
SNSを通して友人もでき、高校時代は学校でも楽しく過ごしていたギュテさんでしたが、突然、原因不明の円形脱毛症にかかってしまいます。病院に通うものの髪はどんどん抜けていき、ウィッグの着用や中高年用の増毛パウダーの使用を余儀なくされました。ついには、全身の毛が抜ける全身脱毛症へと症状は進みますが、脱毛症には直接的な治療法はなく、10年近く辛い治療を続けた末、24歳の時に治療をやめることを決断。「痛みがあったりむくんだり大変な治療を続けるより、毛がない自分を受け入れる方がメンタル的に楽なんじゃないかって思ったんです」。今もギュテさんの体には頭髪から眉毛、まつ毛に至るまで体毛は全く生えていません。
また、高校では脱毛症に悩まされる上に、些細な誤解から同級生からのいじめが始まります。一時はクラス全員から無視をされ、インターネットで「誰にも知られずに死ぬ方法」を検索するほど思い詰め、あれだけ夢中になっていたメイク写真の投稿もほとんどしなくなっていました。それでも“そんなことで死ぬのは悔しい”と思い直し高校に通いつづけると、いつしかクラスメイトの誤解がとけ、いじめは終わりました。メイクを再開し、SNSにも投稿を再開。思い切って母親にカミングアウトしましたが、すぐに理解してもらうことはできませんでした。
笑われ、馬鹿にされても自分の好きなことを貫きたい
高校卒業後は韓国留学を経て、もともと興味のあったアパレル業界へ。メイクもファッションも自由な職場でギュテさんの個性は爆発。ご本人いわく「今より10倍濃い」メイクをし、好きな服を着て個性的な仲間と働くことが楽しくて仕方がなかったと言います。しかし、当時はメンズメイクをする人が少しずつ増えてきてはいるものの、まだまだ少数。道で知らない人に笑われたり、盗撮されてSNSに「ヤバいやつがいる」と無断でアップされたり、働いていた店舗では面と向かって「なんでメイクしてるんですか。キモいですよ」と言われたことも。「自分の個性を否定されているようで悔しかったし、悲しかった。でも何を言われてもメイクが好きで、やめられなかったんです」。そんなとき、それまでメイクに理解を示さなかった母親からある言葉をかけられました。「どうせやるならきれいにして」。
その言葉でギュテさんは、自分の技術不足に気がつきます。「ハッとしました。僕のメイクってただ濃いだけで自分に似合ってなかったんです。第三者の視点を想定していない自分のためだけのメイク。それって見た人が抱くのは違和感だけで決して美しいとは思わないんです。僕はメイクが好きで、それを正当化するためには、誰からどう見られてもきれいでないといけないって気がついたんです」。
それから似合うメイクの研究をスタート。まずは自分の顔を知ることからと思い、体に対しての顔の大きさ、目の位置、幅、眉毛と目の距離、鼻の高さ、唇の幅や大きさなど、自分の顔を様々な角度から撮影し徹底的に分析しました。街でも常にガラスに映る姿をチェックし、頭の中に描いている理想と実際の自分のずれをメイクで納得がいくまで調整。気に入らなかった顔のパーツがメイクの力でどんどん改善されていきました。
「似合うメイクがわからないとか、自分を好きになれないという人の共通点は自分を知らないことだと思います。まずは鏡を見てほしい。自分を知らないと似合うメイクなんてわからないですから」。
メイクを研究するうちにアパレルと並行して、ヘアメイクの仕事もするようになったギュテさん。クライアントに見てもらうための資料動画としてあげたYouTubeが一般の視聴者にもウケて徐々に登録者数が伸び、いくつかの動画がバズったことで人気美容クリエイターの仲間入りを果たします。動画をアップするたびに「勉強になりました」「参考にしています」そんな言葉がコメント欄に溢れるようになりました。
自分にとことん向き合い、誰の真似でもなく自分だけのオリジナルを確立したギュテさんは、多くの人に肯定されることで自信がつき、他人と比べて落ち込むことはなくなったと言います。「自信をつけてくれたのも、また傷つけられたのも人の言葉だったけど、他人の評価や意見は大事にしています。世の中に自分しかいなかったらメイクなんてしないでしょうし。人からどんなに馬鹿にされても、努力してきたという自信があるから必要以上にダメージは受けないです」。
メイクをしている自分が一番好き
男性のメイクが一般的になりつつある今、肯定的な意見も否定的な意見もありますが、ギュテさんは「自分が好きなら思いのままにやればいい」と話します。みんなから好かれるよりも、自分で自分を肯定することが一番大切であり、ギュテさんの場合はその手段がメイクでした。「男性でもメイクをする理由はそれぞれで、それは女性と変わらない気がします。僕の場合は他の子がサッカーが好き、ゲームが好きっていうのと同じでメイクが好きだっただけ。僕らしく自分の気持ちに正直でいられるから、メイクをしている顔が一番好き。コンプレックスをメイクが解消してくれて、自分をもっと好きになれたんです。ある意味すっぴんよりも“ありのままの僕”だと言えます」。
そして、女性のメイクについても、「好きな人にすっぴんを見られたくないとか思わなくていいと思うんですよね。すっぴんを見せて“顔が違う”って言われたとしても“そうだよ、すごくない?”って胸を張って欲しい。サギれるのだって才能。自分で自分を好きになって、もっと自信を持って欲しいです」。
ギュテさんは「いじめの経験を通して人を見る目が養えたし、メンタルも強くなった」と振り返ります。また、脱毛症に関しても「おかげで眉毛を描くスキルが身についた」と、辛い経験もポジティブに受け止め、ネガティブな過去も包み隠さず公表する姿が多くのSNSユーザーに勇気を与えています。
今後も病気やセクシャリティなどマイノリティの立場から、さまざまなことを発信していきたいと話すギュテさん。多くの困難を乗り越えてきた彼の前では、世の中に溢れる「多様性」への理解も言葉だけで終わらせてはならないと感じます。ギュテさんの発信によって今悩みの渦中にいる多くの人たちが救われるはず。今後、ますますの活躍に期待が高まります。
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ギュテさんのお気に入りアイテム!
シャドウやチークは発色の良いものが好きだと言うギュテさん。「最近は、シマーなものや、ジュワっとナチュラルな血色感のチークが多い中、Vieta(ヴィータ) スキンブルーム チークスはしっかり発色してくれてすごく好みでした。この秋はブラウンメイクがトレンドですが、このテラコッタはブラウンのアイシャドウにもすごく合うと思います」。と気に入ってくださった様子。また、ファンデーションはカバー力にこだわっているとのこと。「セルグレースのクリーム ファンデーションはカバー力が高いのによくのびて使い心地が良かったです。最近白斑ができてしまったのですが、それもしっかりカバーしてくれました。するするのびる感覚も気に入っています」。
思わず見惚れてしまうほど透明感のある肌をお持ちのギュテさんに、スキンケアへのこだわりを伺ってみると、皮脂が多く気をつけないと毛穴が黒ずんでしまうのがお悩みとのこと。「乾燥はあまりしない方ですが、セルグレースのデュプレ クリームは使用感が良くて気に入りました。2色になっているのが新感覚ですし、混ぜる量を自分で調整できるので自分らしく使える感じがしますね。あと全体的にパッケージがかわいい!高級感があってすごく素敵なので見ているだけで気分が上がりますね」。